長沙民政職業技術学院 遺体管理学教授 伊藤 茂 氏
5W1Hとは?
5W1Hは他国ではあまり見られない、非常に合理的な考え方であり物事の基本となる考え方である。
特に新聞記事やテレビ等でのニュースでは、5W1Hを伝えれば「正確な情報」となり、購読者や視聴者に対しては現状の情報は伝わり記者の原稿の基本となっている。
5W1Hは医療現場でも重要な考え方であるが、エンゼルメイクにおいても技術面ではなく「エンゼルメイクの基本」となる考えと出来ることから、エンゼルメイクにおける5W1Hを考える必要性がある。
5W1Hとは六何(ろっか)の原則といわれており、何が6個ある状態を指し、何時 ⇔ 何処 ⇔ 何人 ⇔ 何 ⇔ 何故 ⇔ 如何となる。
5W1Hの順番は少々違っていても意味は通じるが、六何の原則に従ってみると、When(何時)⇔ Where(何処で)⇔ Who(誰が)⇔ What(何を)⇔Why(何のために)⇔ How(どの様にして)となる。
また、コストを考えるためには3W2Hを使用して考え、これはエンゼルメイクにおける「料金設定基準」となる考え方であり、3W2Hは以下を指す。
Whom(誰に)⇔ Which(どれを)⇔ Worth(価値)⇔ How much(いくらかかるのか)⇔ How to(どうやって)を考える必要がある。
How muchには数量や予算、単価との解釈もあり、これらを考える必要がある。
When
Whenは何時との意味であるが、エンゼルメイクにおいては着手時期と考えるべきである。
本来、ご遺体への処置は1度ではなく、死亡時期に応じた処置を行う必要があり、死亡直後の処置、死後3時間経過後の処置、死亡翌日の死後入浴を実施する場合にはその時の処置等が必要となる。
そのために何時行えとは一概には言えないが、口腔内の処置は顎関節硬直の始まる1時間以内(概ね2時間まで)に行わなければならず、ご遺体へのクーリングは死亡直後から行えば効果的である。
また、死後変化が現れてから行うべき処置もあり、語遺体管理学的にTPOに沿った考えにより、処置着手時間を決める必要がある。
Where
場所については「死亡場所」(DOA等では死亡確認のHP)で行うべきであり、集団大規模死亡時等ではご遺体収容所やご遺体開示所がこれに当たる。
Who
Whoは誰がと考える以外にも、担当者や中心となる者、組織との解釈もなされている。
What
何をと考えるよりは、仕事の内容と考えられ「エンゼルメイクの内容」と考えるべきである。
エンゼルメイクの内容は対象ととらえられ、生前からケアを行ってきたヒトが死亡した場合や、特殊例としてはDOA、集団大規模死亡時のご遺体が対象となる。
Why
何故ではなく、具体的な目的、必要性、理由が求められ、「エンゼルメイクの目的や必要性、理由」を明確にする必要がある。
これらは厚生労働省研究班の報告でも明らかな部分もあるが、ご家族に対する心理的効果も考える必要性がある。
特に、ご家族が参加してのエンゼルメイクが基本であることから、ご遺体に対してのWhyとご家族に対してのWhy、看護師等に対するWhyを考えなければならない。
How
手段や方法であり、ご遺体を悪化させないための処置と、ご遺体をきれいに見せる・きれいにするための処置からなり、各目的に沿った処置を行う必要がある。
特に死亡時の症状に適合した処置を行う必要があり、これらを考えた上でのエンゼルメイクでなければ、ご遺体の悪化は防止できない。
7W1H
通常は5W1Hを使用するが、我々は7W1Hを利用する場合が多い。
7W1Hは、「起訴のための8何の原則」として、司法研修所検察教官室編纂の「検察講義案(改訂版)」に記されている。
7W1Hとは以下の通りである。
1.Who 誰が 犯罪の主体
2.with Whom 誰と 共犯関係
3.Why 何故 原因、動機、目的
4.When 何時 犯罪の日時
5.Where 何処で 犯罪の場所
6.to Whom 誰に対して 犯罪の客体
7.How どの様な方法で 犯罪の方法
8.What 何をしたのか 犯罪の行為と結果
これらを使用して起訴状を作成するわけであるが、非常に理路整然とした原則であり他分野でも使用できる手法である。
7W1Hは起訴状としては、「AとBが共謀し、金を奪う目的で○月○日、○時○分頃、新宿の路上で通行人Cをナイフで脅して金を奪った」となる。
エンゼルメイクにおいても5W1Hよりも7W1Hが適しており、エンゼルメイクにおける7W1Hは以下の通りとなる。
「死亡前からケアを行ってきたご遺体に対して、看護師(その他も含む)がご家族と一緒に、ご遺体に現れる症状や死後変化を防ぐための処置を、HP内(福祉施設やご自宅)にて死亡確認直後よりご遺体のクーリングや公衆衛生的処置、創部の保護や医学的処置部への保護、化粧や整髪、着付けを行い、ご遺体の悪化を防ぎ、ご遺体に現れた症状をカバーすることにより、ご遺体の状態を改善させ、ご家族の死の受入れや立ち直りを容易にさせ、患者さんの死による医療職の無力感を改善する」と考えられる。
これは、カンファレンスでの申し送りでもポイントとして使える方法であり、このポイントを簡略的に伝えることが重要となる。