エンゼルメイクは、旅立ち逝く人の顔や全身を化粧品などを用いて整えるエンゼルケアのなかの大切な手段です。エンゼルケアとは、「生から死に移行した患者さんとご家族、ケアを行う看護者自身にも意味をもたらす行為」であり、「大切な人を失ったご家族の思いに寄り添い、ご遺体にゆっくりと向き合える、かかわることのできる状況をつくること」が必要だと述べましたが、エンゼルメイクもまた、そのような状況をつくるために行われるべきです。
化粧の目的はさまざまですが、現代社会においては他者との関係性のなかで、主として顔に投影された性格や心の内(心理状態)、いわゆる「その人らしさ」を伝える補助的手段として用いられています。顔はその人らしさが凝縮した、非言語型コミュニケーション手段なのです。死別の場面では、もう言葉で思いを伝えあうことはできません。しかし、逝く人の表情や姿のなかにその人らしさや心のありようが感じられれば、ご家族の心のなかにさまざまな思いや感情がよぎってくるでしょう。その見えない思いに寄り添い、表現することがエンゼルメイクの役割なのです。ゆえに、エンゼルメイクはクレンジングやメーキャップをを上手く行うことがすべてではありません。どうすれば逝く人とご家族の関係性をつくる手段として機能するのかどうか、それを考えて実践していただきたいと思います。